AQC2022に参加しました!

Tags
AQC2022
date
2022/7/11
Author
Jij Member
2022年6月20日から24日にイタリアのトリエステで行われた量子アニーリング・断熱量子計算の国際会議 Adiabatic Quantum Computing Conference 2022 (AQC2022)に、CTOの西村と研究開発者の後藤と松山が参加してきました。去年のAQCは、オンライン開催でしたが、今年は現地及びオンラインのハイブリット開催ということで、現地まで行ってきましたので、この記事では、AQC2022の現地での様子をお伝えしたいと思います。
弊社からは、西村が口頭発表、後藤がポスター発表を行いましたので、後半では彼らの発表についても触れたいと思います。
 

AQCとは

Adiabatic Quantum Computing Conference (AQC)は、その名の通り、断熱量子計算、量子アニーリングに関する国際会議で、分野の専門家が理論・実験問わず、この分野の最新の研究成果報告を直接聞くことのできる貴重な会議です。2012年から毎年、世界各地で開催されています。去年はコロナの影響でオンライン開催でしたが、今年は、現地参加可能なハイブリットの会議ということもあり、イタリアやヨーロッパだけでなく、カナダ、インドなど様々な国から研究者が参加していました。
 
AQCでは、大学の研究者だけでなく、D-WaveやGoogle、ヨーロッパの量子系スタートアップ等の様々な企業が研究報告をおこなっていました。このような、企業と大学が同じ立場で議論し、研究を進めていけるというのがこの分野の魅力の一つですね。現地参加したJijメンバーも海外の研究者達と議論し、今後の研究のアイディアを持って帰ってきました。
 

面白かった講演の紹介

 
今回もいくつもの興味深い公演がありましたが、我々が聞いていて面白かった講演を2つ紹介したいと思います。今回行われた発表は、全てICTPの公式YouTubeもしくは、AQC2022のプログラムページから公開されているので、ぜひそちらから確認してみてください。

Quantum critical dynamics in a 5000-qubit spin glass

D-Waveの研究で、スピングラス相転移を量子、古典系で調べた研究になります。coherenceを保つことのできるnsの時間でアニールできる最新のD-Waveマシンを使うことで、明らかにD-Waveマシンの結果が古典系での臨界指数とは異なる値を得たという報告でした。
 

Nonlocal Monte Carlo moves with algorithmic quantum and thermal fluctuation

こちらはGoogleの研究で、新しい非局所的なMonte Carloアルゴリズムの提案です。各ローカルミニマにおいて、うまくクラスターを見つけることでクラスターとそれ以外を別々にアニールするアルゴリズムのようです。彼らの報告だと4-SATではかなりうまく機能するようです。より実社会に近い問題で、彼らのアルゴリズムがどのような性能を示すのか調べてみたいです。
 
もちろん、上記以外にも興味深い研究がありましたので、ICTP YouTubeからぜひ他の講演も見てみてください。

Jijの講演

CTOの西村が「Estimation of hyperparameters on Ising model with constraint」というタイトルで講演を行いました。量子アニーリングで現実の社会問題を扱う際には、制約付き最適化問題をラグランジュ緩和することでイジングモデルとして定式化して解きますが、そのために必要なペナルティ項の重みを調整する新しいアルゴリズムの提案を行いました。彼の発表では、既存のパラメータ調整アルゴリズムに比べて、安定して良い実行可能解を得ることを示しました。こちらの内容についても、動画で公開されているので、ぜひ見てみてください。また、こちらのアルゴリズムは弊社の提供する量子イジング最適化クラウドサービスJijZeptの機能の一部として試すことができます。
研究開発者の後藤は「Benchmarking anneal offset adjustment in graph coloring problem」というタイトルでポスター発表を行いました。ポスター発表は動画が無いため皆様にみて頂くことが出来ないのですが、この発表は、グラフ彩色問題に対しanneal offsetというD-Waveのパラメータを各種手法で調整しベンチマークを行ったところ先行研究からの予想とは異なる結果を得たというものです。この現象の背後にある物理についてはまだ特定出来ていないものの、ポスターセッションにおいて他の参加者の方々と有意義な議論を行うことが出来ました。今後はこれらの議論をもとに結果を深掘りし、D-Waveの性能をより引き出すための手法まで落とし込めたらと考えております。
 
今回は、多くの専門家と議論し、多くの刺激を得ることができる会議でした。今後もJijは量子アニーリング・量子を使った最適化計算の技術を社会実装をするための基礎研究をおこなっていきます。